前回インタビュー記事でお話を伺った、東山動物園の園長、黒邉雅実(くろべまさみ)さん。実はインタビューの後、黒邉さんがおすすめする動物園の楽しみ方についても教えてもらいました。そこで今回は「いままで、なんとなく動物園を回っていた」というかたにこそ知ってほしい!動物園を何倍も楽しむための工夫や、東山動植物園の豆知識など、耳寄りな情報をお届けします。
目次
動物園長おすすめ!午前のプラン(10:00〜12:30)
アジアゾウやライオンは、開園後1時間以内がねらい目!『バードホール』で美しい鳥を見たあとは、おしゃれなモーニングを
「最初のポイントは、開園後1時間以内、つまり10時までに動物園に来てもらうことですかね」
「私、動物園はいつも午後から入園してました」
「確かに午後から入園する方も多いんです。ただ、お昼から夕方にかけては、昼寝をしている動物が多いんですよ」
「言われてみれば、私が動物園に行ったときは必ずと言っていいほど、たいていの動物は寝ていたような・・・」
「寝ている姿もかわいいですけど、どうせなら活発的な姿を見たいという方は多いですよね。開園時間は室内にいた動物が縄張りの確認などで運動場に出てくる時間でもあるので、比較的多くの動物が活動的になってます。特にライオンやアジアゾウなんかがその代表例です。
なので、まずは開園後1時間以内を狙って、アジアゾウ、ライオン、トラなどの動物に会いに行ってもらえれば、元気に運動場を歩き回る姿が見られると思いますよ」
「そのあとは、どこを回るのがいいですかね」
「『バードホール』という施設をご存知ですか?」
「名前からすると、鳥たちがいる施設のようですけど」
「ざっくり言えばその通りなんですが、この施設にはある工夫が凝らしてあるんです」
「ある工夫、ですか」
「その答えを確かめに、実際に施設の中に入ってみましょうか!」
「うわぁ〜!インコ、クジャク・・・きれいな鳥がたくさんいますね!何だか、鳥たちとの距離が近い気がするような」
「まさに、この施設の工夫はその近さなんです!現在は、人が通る通路と鳥の広場の間に鳥インフルエンザの影響で網が張られていますが、以前はなかったんですよ」
「え!ということは、人と鳥の間を遮るものは何もなかったと?」
「その通りです。遮断物がないぶん、鳥との距離を近く感じるというわけなんです。きれいな鳥を間近で見られるので、写真好きの方にも人気が高くて。いまある網も、鳥インフルエンザのシーズンが落ち着けば取り払う予定なので、みなさんにも是非訪れてほしい場所のひとつです。
バードホールから少し歩いたところに、カフェやフードコートなどの食事処があるので、このあとにお昼を食べてもいいかもしれませんね。実際にそこへ行ってみましょうか」

『バードホール』の目の前に位置するカフェ『メゾン・ド・ヴェール』
「想像していた以上におしゃれですね!私が幼いころに東山動植物園に来たときは、小さな売店がいくつか並んでいて、レストランももっとシンプルだった気がします」
「東山動植物園も、時代の流れとともに変わっている部分はありますね。カフェやフードコートは、その一つです。ところで、こんなものを見つけたんですけど」
「え、モーニングメニューがあるんですか!動物園でモーニングを食べる発想はなかったですけど、名古屋の根強いモーニング文化を考えてみれば、ナイスなアイデアですよね」
「私も、モーニングメニューがあるとは聞いていたんですけど、正直詳しいことは知らなかったので。これ、ライターさんが見つけたおすすめポイントってことにしたらいいんじゃないですか?『こんなものも発見しました!』みたいな感じで」
「(黒邉さん、優しすぎる・・・)」
モーニングメニューは3種類。パンケーキやエッグベネディクトなど、どれもおしゃれカフェで出てきそうなものばかり!こちらのメニューは11時半まで注文することができるので、モーニングとランチを兼ねたブランチとして食べるのもいいかもしれません。
ほかにも、フードコート『ゾアシス』には、名古屋のソウルフードである味噌カツ丼や台湾まぜそばなど、「どれを頼もうか」と来園者を優柔不断にさせるフードメニューの数々が並んでいます。以前、IDENTITY名古屋でも取り上げた、沖縄の新しいドーナツのお店『BALL DONUT PARK』もあるので、食後のデザートとして頼んでみてはいかがでしょうか。
「この日のために、張り切ってお弁当を作って来た!」というかたは、『ゾアシス』の隣に休憩スペースが設けられているので、そこでランチタイムをとるのもおすすめです。「お弁当を作ってきたのはいいけど、少しおかずが足りないかな?」なんてときは、すぐ隣のフードコートで「もう一品」買うのも、一つの手。
園長おすすめ!午後のプラン(12:30〜14:30)
コアラやゴリラは、エサやりの時間に!『世界のメダカ館』では、新種のメダカを観察。身近な生き物の現状を知る
「お昼からは、どのようなルートで回るのが理想ですか?」
「午後からは、エサやりの時間に合わせて、会いに行く動物を決めるといいですよ。エサをやるタイミングも活発になる動物は多いので。13時からはコアラのエサやりの時間なので、コアラのところにいきましょうか!」
「コアラ・・・そういえば、黒邉さんは“コアラ博士”という異名を持っていらっしゃるとか」
「“コアラ博士”だなんてそんな、めっそうもないですよ。私なんてまだまだですし、私よりもコアラに詳しいかたは世の中にもっとおられると思います。強いて言うなら、園長になる前に東山動植物園にいるコアラの導入に携わったこともあって、コアラへの思い入れは強いかもしれません」
「導入に携わっていた、というのは?」
「東山動植物園にいるコアラはオーストラリアからやってきました。わたしは実際に現地へ足を運び、コアラの引き渡しに関する交渉を担当していたんです」
「へえ〜、実際にオーストラリアまで行かれたんですね・・・。あ!ここがコアラの施設ですか」
「中に入る前に、この展示物に注目してほしいんですが」
「このコアラ、とてもリアルに作られてますね・・・」
「実は、リアルに再現されているのは、コアラだけじゃないんですよ。ここに、ひっかき傷があるのわかります?」
「あ、本当だ。小さな傷がいくつかありますね」
「これ、コアラが木に上っているときにできる傷跡なんですよ。この展示物は、コアラが東山動植物園にやってきてから30周年を迎えた2004年に完成したもので、それ以前に東山動植物園のコアラが実際に木につけた傷をここに持ってきたわけです」
「芸が細かい・・・!」
「この他にも、ユーカリの葉の匂いを嗅ぎわけるコーナーや、コアラの生態について学習できるコーナーもあるので、施設の中に入る前に是非立ち寄ってほしいです。ちなみに、コアラは1日18時間を睡眠と休息にあてているって知っていましたか?」
「そうなんですか!?活発的なイメージはなかったですが、そこまでとは・・・。それを考えると、エサやりの時間は活動的なコアラの姿を見られる数少ないチャンスなので、逃せませんね」

コアラが1日のほとんどを休息にあてるのは、主食であるユーカリの葉に栄養が少なく、なるべくエネルギーを使わないようにするためだそう
「コアラの次は、どの動物にいきましょうか?」
「13時半からは、キリンのエサ交換が始まります。キリンの運動場は、コアラの施設のすぐ隣にあるので移動もスムーズにできますし、飼育員によるキリンの解説も聞くことができるので、とてもおすすめです!」
「また、13時から14時の間にゴリラのエサやりも行われるので、午後は、この3つをうまく時間配分して回ってもらえるといいですね」
「イケメンゴリラとして有名な、あのシャバーニがエサを食べているところは、是非とも写真に収めたい・・・」
「私がシャバーニの導入に携わったころは、まだシャバーニも小さかったんですけど。今では、大きくなったどころか、イケメンゴリラだと言われるまでになって・・・」
「ちょっと待ってください。黒邉さん、シャバーニの導入にも関わってたんですか!?」
「そうです。コアラとゴリラ、あとはゾウの導入も担当していました。なので、最初に会ったころは幼かった動物たちが、今では立派に成長して来園者のかたに親しまれている姿をみると、やはり感極まるものがありますね」

シャバーニの運動場の周りは、たくさんの人で溢れる
「このあとは『世界のメダカ館』に寄ることをおすすめします。ここは、私が個人的にも好きな施設で」
「メダカ館ですか・・・すいません、正直、地味なところだというイメージがありました」
「メダカは小さいので、地味だと思われるかたも多いかもしれません。メダカ館が、東山動植物園にしかない施設だということも地味に知られていないようですし」
「知りませんでした。そう言われてみれば、ここ以外の動物園で見たことないですね」

館内ではメダカだけでなく、川魚も観察できる
「このメダカ館には東山動植物園の職員がインドネシアで発見した「ティウメダカ」という新種のメダカがいるんです!もともとメダカはアジア固有の淡水魚で、現在生息が確認されてるのはティウメダカを含めて全36種類。東山動植物園のメダカ館では、そのうちの27種類を見ることができます」
「メダカって、全部で36種類もいるんですね。私も小さい頃は、近所の小川でメダカを採ってた思い出があるんですけど、最近はメダカ自体をあまり見かけない気がします」
「それは気のせいではないんです。野生のメダカの数は年々減少しており、もう名古屋市では野生のメダカは見られないと言われているほどです。時々、『野生のメダカを発見しました』という連絡を受けて我々も調査しに行くことがあるんですが、それらのメダカは野生ではなく「カナヤシ」という外来魚なんです。
なぜ、日本にもともと生息していた野生のメダカが減少し、外来魚であるカナヤシが増えているのか。それをみなさんに考えてもらうためにも、ぜひ『世界のメダカ館』には足を運んでいただきたいですね」
「娯楽の目的だけでなく、動物の生態を知る“学習の場”でもありますもんね」
「その通りです。私たちにとって身近な存在であった生き物が、今どういう状況におかれているのか。そういうことも考えてもらいたいですね」
園長おすすめ!締めくくりのプラン(14:30〜15:00)
地上134mの『東山スカイタワー』で1日の振り返りを。お土産ショップ『ズーボゲート』では、有名アーティストとのコラボグッズをチェック!
「さあ、そろそろ締めくくりといきましょう!」
「動物園の締めくくりといえば、やはり、お土産ショップですか?」
「もちろん、東山動植物園のお土産ショップ『ズーボゲート』もいいですけど、その前に是非立ち寄ってほしい場所があるんです。それが、こちらです!」
「これって、『東山スカイタワー』ですよね。東山動植物園に来るたびに、高い塔があるな〜とは思ってたんですけど、登ったことはありませんでした」
「そういう方にこそ訪れてもらいたいですね。地上134mの高さなので、晴れている日は本当にきれいな景色が見えるんですよ。園内で思いっきり遊んでもらったあとに、この展望台に登って『コアラ、かわいかったよね!』『アジアゾウも、迫力あった!』『やっぱり、シャバーニは人気だね』なんて会話をしながら、動物園での1日を大切な人と振り返る。そのあと、お土産ショップで思い出の品を買って帰路につく、と。そんな締めくくり、どうでしょうか?」
「黒邉さん・・・」
「最高です!!!素敵な動物園プラン、ありがとうございました」

頂上から見る景色は、圧巻の美しさ
「高いところが苦手で」「登りたいけど、天気が良くない」そんなときは、展望台に行くのをパスして、そのままお土産ショップへ向かうのもいいかもしれません。正面入り口の近くに位置するショップ『ゾアシス』では、動物のイラストが描かれたお菓子やぬいぐるみなど、動物園定番の人気商品が手に入るのはもちろん。「動物園で、こんなものも買えるの!?」と驚く商品も並んでいます。

正面入り口近くのお土産ショップ『ズーボゲート』
その代表例が、日本国内だけでなく海外でも活躍の幅を広げているアーティスト、花井祐介さんと東山動植物園のコラボグッズ。アーティストならではの、豊かな感性を軸に描かれた動物のイラストは、「かわいい・かっこいい・面白い」の三拍子揃い!シンプルなデザインのものが多いので、普段使いもできちゃいます。Tシャツ、キャップ、キャンティーンボトル。東山動植物園でしか手に入らない、おしゃれな限定商品をぜひチェックしてみてくださいね。

花井祐介さんデザインのキャンティーンボトル
東山動物園の園長、黒邉さんがおすすめする動物園プランはいかがでしたか?もちろん、このプラン通りではなく、好きな時間に好きな動物を見て回っても楽しめるのも、東山動植物園の魅力のひとつ。ただ、動物の生態を知ったうえで回り方をちょっと工夫すれば、その楽しさは何倍にも膨れあがります。今までとは少し違った楽しみ方を、東山動植物園で。そこには、新たな発見があなたを待ってるかもしれません。
東山動植物園
営業時間:9:00〜16:50(最終入園 16:30)
定休日:月曜日(国民の祝日または振り替え休日の場合はその翌日)※80周年記念イベント期間中は、不定期
URL:東山動植物園公式サイト