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上前津のギャラリー&カフェ「THE SHOP 十二ヵ月」で始める”丁寧な暮らし”

上前津のギャラリー&カフェ「THE SHOP 十二ヵ月」で始める”丁寧な暮らし”

グルメ 

奥路地に佇む洋食店、老夫婦が営む小さなパン屋、休日だけ開店する雑貨屋——その土地に根付き、日々の暮らしにそっと灯りをともしてくれるようなお店が、名古屋にもたくさんあります。『あの娘とナゴヤ。』では、名古屋で暮らす女性が、何でもない日に出会う、とびっきり魅力的な場所を「ストーリー」とともにご紹介。あなたの毎日を照らす“ステキ”を、名古屋の街へ見つけに行きませんか?

本との出会い

読書が趣味というある人が言っていた。
「本を探しに行くときと、本に出会いに行くときがある」

これ、とても分かる。

書店で特定の本を探すのは簡単だ。店員さんに聞いてもいいし、大型書店では検索機械を使うこともできる。5分もかからずに目当ての本を探し出すことができるだろう。

でも、時には「本に出会いたい」気分のときがある。
偶然視界に入った一冊を手に取る瞬間は、まさに「本との出会い」。地図を持たずに歩いた通りで、偶然素敵なお店を見つけたときのような喜びがある。

そして一冊の本との偶然の出会いが、新たな出会いへと繋がることもあるのだ。

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先週「良い本があれば買おうかな」くらいの気持ちで、ふらっと駅前の書店へ立ち寄った。
店内を歩きながらあたりを見渡していたとき、レジの一角に作られたカフェ巡りをテーマにしたコーナーが目に入った。有名どころを紹介したものからディープな店を集めたものまで、5、6冊並んでいたと思う。

名古屋に住んで2年経つけれど、そういえば名駅や栄の決まったカフェに行くことが多いな」
そう思って手にしたのは、川口葉子さんの「名古屋カフェ散歩」という本。無意識のうちにこの本に手が伸びていた。

パラパラとページをめくったあと、目次を見てみる。すると、「THE SHOP 十二ヵ月」という店名が目に留まった。
“CAFE”ではなく”SHOP”というのが気になる。……どんなお店なんだろう。

次の週末、早速行ってみることにした。

ギャラリー&カフェ「THE SHOP 十二ヵ月」との出会い

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「名古屋カフェ散歩」をトートバッグに入れて家を出る。地下鉄で「THE SHOP 十二ヵ月」のページを読みながら予習。写真は載っていないが、「抹茶コーヒー」というメニューがあるらしい。

上前津駅7番出口を出て、まっすぐ歩くと1分ほどで到着。
無機質なビルが立ち並ぶ通りに、突如現れる町屋風のお店。この一角だけ独特な雰囲気に包まれているが、不思議と街に溶け込んでいる。

見上げると、「THE SHOP 十二ヵ月」という店名と共に「器、雑貨、炭焼珈琲」の文字が。
そう、「十二ヵ月」は作家ものの器など工芸品を扱うギャラリーでもあるのだ。

 

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入口にあるメニューに目を向ける。本の中で紹介されていた「抹茶コーヒー」の写真もあった。おすすめなのだろうか。
そんなことを考えながら、くちなし色ののれんをくぐって店内に足を踏み入れた。

 

上前津のギャラリー&カフェ「THE SHOP 十二ヵ月」で始める"丁寧な暮らし" - jyuni1お店に入って右手はギャラリー、左手はカフェ。カフェは奥に座敷もあるものの、メインは米松という松の木を使った12席のカウンター。細部までこだわりを感じる落ち着いた空間だ。
私の入店と同時にカフェの窓際の席が空いたので、まずはこちらで一息つくことに。

巻いていたマフラーを外しながらオーナーの柿沼さんに「素敵なお店ですね」と言うと、お店をはじめた経緯を話してくれた。

1996年にオープンした「十二ヵ月」は、デザインの仕事に携わる柿沼さん夫婦が自身で手掛けたお店。
「十二ヵ月」のオープン以前から仕事や趣味で作家ものの食器に触れる機会があったが、当時はそういったものを気軽に手にできる場所が少なかったそうだ。敷居が高いイメージが付きものだったという。

「一つ一つ丁寧に作られた食器を実際に手にする場」「暮らしを提案する場」
そんな場所を作りたいとの想いから、当時は珍しかった”ギャラリー+カフェ”という形態でお店を始めたのだとか。

 

上前津のギャラリー&カフェ「THE SHOP 十二ヵ月」で始める"丁寧な暮らし" - BEBC25FD D10B 4F45 807C 4CF312150976メニューを見ながら、柿沼さんに気になっていたことを聞いてみる。
「抹茶コーヒーって珍しいですよね」

すると、「コーヒーにクリームをのせたウィンナーコーヒーの、クリーム部分を抹茶クリームにしたものです。うちのオリジナルメニューなんですよ」と教えてもらえた。

「十二ヵ月」では豆を自家焙煎するなどコーヒーにこだわっているものの、コーヒーが苦手というお客さんもいる。”コーヒーが苦手な人でも飲みやすいメニューを”との想いから誕生したのが「抹茶コーヒー」(ICE/HOT各税込630円)。そんな気遣いが込められた一品だ。

ドリンクと共に、自家焙煎コーヒーの「コーヒーゼリー」(税込700円)「レモンゼリー」(税込650円)、季節によってフレーバーが変わるタルトやスコーン(ドリンクとセットで税込780円~)も楽しめる。

今回はICEの「抹茶コーヒー」と、「名古屋カフェ散歩」にも写真が載っていた「コーヒーゼリー」を注文。
本を片手に、わくわくしながら待つ時間も心地よい。

 

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先に出てきたのは、丸みのあるグラスに入れられた「コーヒーゼリー」。本の中の写真で見てイメージしたよりも大きめサイズで、ちょっとびっくり。ゆっくりたっぷり楽しめそうだ。

自家焙煎珈琲のゼリー、スクープで大きくすくったアイス、口に入れたらとろけそうなクリームの三重奏は見ているだけで幸せな気分に。

 

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「食べるのがもったいないな」と思いながら、心躍らせスプーンを手にする。
一口目はクリームからいこうか、それともアイスとゼリーを一緒にすくってみようか。

 

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そんな風に迷っていると、「抹茶コーヒー」も登場。

素敵な器だなと眺めていると、「これは抹茶コーヒーのために、作家さんに特注で作ってもらったカップとソーサーなんです。抹茶碗をイメージした器なんですよ。」と説明してもらえた。器ではなくメニューが先だなんて驚きだ。そんなストーリーを知るのも楽しい瞬間。

 

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まずは「コーヒーゼリー」のクリームを一口。そしてゼリーとアイスも口に運ぶ。
コーヒーのほろ苦さと、甘すぎないアイスとクリームが口の中で絶妙に溶け合う。「上品な美味しさ」という言葉がぴったりだ。

そして、気になる「抹茶コーヒー」。今回選んだICEはクリームが溶けにくいので、スプーンで混ぜたりすくったりしながらいただく。
抹茶クリームでマイルドになったコーヒーは、しっかりコーヒーの美味しさが感じられるのに飲みやすい。抹茶のドリンクと言えばミルク系が多いが、コーヒーとも合うとは意外な発見だ。

 

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“コーヒーが苦手な人でも”との想いから誕生した「抹茶コーヒー」だが、「十二ヵ月」のコーヒーは、コーヒーに苦手意識がある人でも飲めることもあるそう。常にタイプの異なる豆が3種類ほど用意されており、好みに合ったものを選ぶことができる。

「コーヒーの酸味が苦手という方がいますが、本来コーヒーの酸味はフルーティーなものなんですよ」
柿沼さんのこの言葉に、次に来るときはコーヒーを注文してみようと心に決めた。

“丁寧な暮らし”との出会い

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「十二ヵ月」では、カップやお皿などの食器以外にも、作家ものの道具が使われている。コーヒーを淹れるドリップポットはその代表格だ。

このドリップポットはある作家さんに依頼して作ってもらった品で、今では世界的に有名になったその方の代表作なのだとか。
もともとは金属特有の艶やかな色だったというポットも、長年大切に手入れされながら使われてきたことで、美しいくすみがかかった色に変化している。「モノを育てる」とは、こういうことを言うんだ。

 

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ゼリーを食べ終わったところで、ギャラリーを覗いてみる。柿沼さんによって集められた作品は、美しいだけでなくどれも日々の食卓で使いやすそうなデザイン。
「鑑賞するためではなく、生活の中で実際に使い暮らしを彩る器」を心がけているそうだ。

同じ作家さんの作品でも、「十二ヵ月」に合うものと合わないものがある。既に作られた作品の中から選ぶこともあれば、「抹茶コーヒー」のカップのように制作を依頼したり、作家さんに対して提案・プロデュースすることもあるのだとか。時には作家さん同士を繋げ、コラボ作品を提案する場合も。「今までにないもの」を生み出すきっかけづくりまでしているなんて、すごい。

 

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ギャラリーを見渡して目に留まったのは、銀彩のカップ&ソーサー。これもドリップポットと同じように、丁寧に手入れして使うことで色みの変化を楽しめるそうだ。

柿沼さんは、「忙しい毎日でも、少しだけ手間をかけて手入れする。そんな心のゆとりが、器を育てるんです」と話してくれた。

心にゆとりのある”丁寧な暮らし”、私もはじめてみよう。

 

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帰路につく頃には、「十二ヵ月」はすっかり私のお気に入りの場所になっていた。

ゆっくり自分と向き合いたいとき、心を整えたいとき。自然と「十二ヵ月」へと足が向くような気がする。

 


THE SHOP 十二ヵ月
営業時間:10:00-19:00

定休日:無休(正月・お盆など変則の場合あり)

URL:公式HP 公式Instagram

住所:名古屋市中区上前津1-3-2-1F

※メニュー・営業時間などは公開時点での情報となります。最新の情報は各店舗のHPやSNSにてご確認ください。

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