カブトビールの歴史を『半田赤レンガ建物』で味わってきた -おとなの社会科見学-

カブトビールの歴史を『半田赤レンガ建物』で味わってきた -おとなの社会科見学-

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三百万本の彼岸花を見られる「ごんの花まつり」や五年に一度しか開催されない「はんだ山車まつり」など、秋の行楽シーズンに見所の多い半田市。幻のビールとも呼ばれる“カブトビール”の醸造所だった「半田赤レンガ建物」も2年前にリニューアルオープン。マルシェや企画展が毎週のように催され、人々が交流する場となっています。

今回はリニューアルされた「半田赤レンガ建物」へ“おとなの社会科見学”に行ってきました。

半田赤レンガ建物に“おとなの社会科見学”へ

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名古屋エリアの社会科見学スポットをご紹介!第一弾は『半田赤レンガ建物』

小学生や中学生の頃に行った社会科見学。大人になってから行けば、当時は見えなかったものも見えるようになって、一味違った楽しみ方をできることに気づきます。最近は、旅行会社が社会科見学ツアーを始めるほど人気があるのだとか。

そこでIDENTITY名古屋でも『おとなの社会科見学シリーズ』と称し、名古屋エリアにある社会科見学スポットに足を運んで、おとな流の楽しみ方をお伝えしていきます。

シリーズ第一弾となる今回は、2015年にリニューアルオープンした旧カブトビール醸造所こと『半田赤レンガ建物』に行ってきました。

今回は大ナゴヤツアーズから申し込めるコースに沿って建物を巡ります。

大ナゴヤツアーズのコースはこちら

カブトビールと半田赤レンガ建物とは?

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パリ万博で金賞に輝いた幻のビールとその醸造所

サッポロやキリン、エビスにアサヒなど名だたるビールの生まれた明治時代のはじめは、まさに日本のビール黎明期。この時代に大手4大ビールメーカーに迫る勢いで普及し、1900年に開かれたパリ万博で金賞に輝いたビールがあることをご存知でしょうか?

そのビールこそ、半田で生産されていた『カブトビール』。1889年から1943年のおよそ半世紀の間だけ生産され、幻のビールとも呼ばれています。

その幻のカブトビールを生産していた醸造所が、今回ご紹介する『半田赤レンガ建物』。横浜赤レンガ倉庫も手がけた建築界の巨匠”妻木頼黄(つまきよりなか)”によって設計された、国内最大級のレンガ造建築です。

以前は年に数回しか一般公開やカブトビール販売が行われていなかった『半田赤レンガ建物』ですが、2015年にリニューアルオープンし、常設展示が開始。いつでもカブトビールの歴史と復刻されたカブトビールを味わうことのできる観光施設になりました。

見学ってどんなことをするの?

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歴史を知った後にカブトビールを味わうコース

今回のツアーは3部構成、それぞれの場所では次のような体験をすることができます。

  1. 半田赤レンガ建物の展示室巡り
    建物内に設けられた展示室で、赤レンガ建物やカブトビールの資料を眺めながら歴史を学びます。冷蔵庫のなかった時代に低温で長期醸造されるビールをどのように作ったのかを、実際にビールの醸造されていた部屋で聞くなど、ロマン溢れる体験が見所です。
  2. 半田赤レンガ建物を外から見学
    室外に出て、建物の外に刻まれた歴史を見つけていきます。ひとりで観光に来たらうっかり見逃してしまう展示や、掲示はされていないけれどガイドさんが教えてくれる隠れた秘密も。レンガに刻まれた傷に込められた意味は必見。
  3. カブトビールの飲み比べ
    半田赤レンガ建物中にあるCAFE BRICKで、カブトビールの試飲をします。明治時代と大正時代、それぞれの味を再現して復刻させたカブトビールを飲み比べ。ここまでに学んだ歴史が一体どんな味に繋がっていたのかを、自分の舌で確かめてみてください!

 

さて、ここまでのご紹介でもお分りいただけるように、この社会科見学の推しは案内をしてくださるガイドさんの存在!

案内してくださるのは、赤煉瓦倶楽部半田で理事長を務める馬場さんです。

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赤煉瓦倶楽部半田の馬場さん

馬場さんは赤レンガ建物が取り壊しの危機に迫られた際、保存団体を設立して、当時の事務局長として保存活動に奔走された方。その後もカブトビールの復刻に向けて、大手ビールメーカーに残る資料をたどったり、カブトビールの分析表を基に地ビール会社へ再現を依頼するなどの活動をしてきたキーマンです。

赤レンガ建物の保存とカブトビールの復活に1から関わっていた馬場さんだからこそ語れる当時の苦労や、展示室では紹介しきれないアレコレをお話いただきます。

半田赤レンガ建物の展示室巡り

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半田赤レンガ建物とカブトビールの歴史がぎっしり詰まった展示室

さてさて、まずは中に入って待ち合わせ。

赤レンガ建物のエントランスはとっても広々としていて、朝から多くの方がくつろいでいました。展示室と一部の有料スベース以外は無料で開放されているので、地元市民の憩いの場にもなっているようですね。

5年ぶりに開催される『はんだ 山車まつり』の話をしている方や、ごんの花まつりで撮ったであろう彼岸花の写真を見せ合う方など、地元の人で賑わっています。

それでは早速展示室へ進みましょう。展示室への入場料は200円です。

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ツアーは15分程度の映像を観るところからスタート。半田という土地柄や当時の時代背景など、知っておくことで展示物をより楽しめる知識を映像から学びます。

半田赤レンガ建物は明治31年 (1898年)に誕生したビール製造工場。日清戦争で勝利を収めて国民の生活が豊かになり、ビールへの需要も高まってきた時代に生まれました。

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半田は、江戸時代に酒やしょうゆ、味噌などの醸造業が栄えた地域です。現在のミツカンに繋がる中埜酢店(なかのすみせ)という醸造食品メーカーが生まれたのもこの半田。その中埜酢店4代目とその甥が「丸三ビール」と名付けて作ったビールがカブトビールの前身にあたります。

大都市に基盤をおく4大ビール(アサヒ・エビス・キリン・サッポロ)が多くのビールシェアを占める中、半田から追撃ののろしを上げたカブトビール。

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本格的にビール事業を始めるにあたって、中埜酢店4代目とその甥たちは醸造業の盟主たちから資金を集めました。最終的に集まったのは当時の額で60万、現在の価値に換算するとなんと30億円!

当時の中部地区で30億の資本がある企業は片手で数えられる程しかなく、それだけで彼らがビール事業にどれほど本気だったのかが伝わってきます。

その資本を使って、ビールで有名なドイツから機械と醸造の技師を呼び寄せたり、半田赤レンガ建物を建造。その甲斐あってか半田レンガ建物の竣工後、たった2年でパリ万博(1900年)に出品して金賞を受賞しています。

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ジブリの「風立ちぬ」に登場したカブトビールの看板も展示されています

当時飛ぶ鳥を落とす勢いだったカブトビールが、旧名古屋駅の前(ささしまの辺り)にドーンと立てたのがこの看板。実はこの看板は長久手にできる予定のジブリパークにも建てられるのだとか。

カブトビールの歴史、知れば知るほどその味を確かめずにはいられません!

半田赤レンガ建物を外から見学

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壁に刻まれた歴史のつめ跡

さあ、展示室を抜け外へとやってきました。外観には工場が閉鎖されてから、今に至るまでの歴史が刻まれています。

カブトビールは戦争の煽りを受け、太平洋戦争をきっかけ工場を閉鎖。閉鎖されている際、赤レンガ建物は倉庫として利用されていました。

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当時は半田も空襲を受け、赤レンガ建物の外壁には米軍の戦闘機が放った銃痕が生々しく残っています。実業家の歩みを残すことはもちろん、戦争の記憶を伝える役割も担っているのですね。

戦後半世紀以上も活躍の場を失っていた赤レンガ建物。一度はその土地を売りに出すことが決まり解体が始まりましたが、事態の重要性に気づいた半田市長が解体に「待った」をかけました。

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議会の承認を求め、一度は否決されながらも、市当局の努力で最終的に可決され赤レンガ建物は保存されることになります。しかし一部は取り壊されてしまったため、入り口側の外壁には取り壊されたレンガの見える箇所がいくつもあります。

カブトビールの飲み比べ

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あなたは明治派?大正派?

これまで建物の中にある展示室でカブトビールの誕生を知り、外で建物を眺めながら復活までの経緯を学んできました。ここに来るまでにおよそ1時間半、カブトビールに詳しくなって、ほどよく歩き疲れてきた頃かと思います!

ここでついにお待ちかね!カブトビールの試飲の時間です。

半田赤レンガ建物にはCAFE BRICKというビアホールのようなスペースが設けられており、こちらでゆっくりと試飲を楽しむことができます。

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明るいうちからみなさんビールを嗜んでいて、活気に溢れるビアホール。

ツアーには試飲が含まれており、ビールの引換券があらかじめ渡されています。

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飲み比べセット(通常800円)

今回いただく飲み比べセットはこちら!

左側の淡い琥珀色をした方が大正カブトビール。大正3年ごろの分析表をみてできる限り忠実に再現したもの。右側が濃い赤褐色の方が明治カブトビール。90日間0℃で寝かしたワインのようなビールです。

もう待ちきれません…いただきます!

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麦の味わいが濃厚!どちらのビールもずっしりとした麦の風味が口の中に広がります。

明治時代のビールはアルコール度数7%のまろやかな味わい、一方で大正時代のビールはアルコール度数5%でしっかりとした苦味があります。

明治時代の味をを復刻したカブトビールは麦の甘みが強く感じられ、ワインに近いビールという表現に「なるほど」と唸ってしまいました。

どちらもお土産コーナーで購入することができるので、おうちでも楽しむことができますよ!

 

さて、今回はカブトビールで有名な『半田赤レンガ館』におとなの社会科見学へ行ってきました。

ガイドが付いたツアーはこれまで真剣に聞いたことのなかった私ですが、今回ばかりは聞き入ってしまいました。友達同士で行ったら読まない活字の説明も、ガイドさんが伝えてくれるので普段よりもずいぶんと濃い時間に。

なにより歴史を知った上で飲むカブトビールの味は格別です!

10月7-8日には『はんだ 山車まつり』も5年ぶりに開催される半田。この機会に半田赤レンガ建物まで足を運んでみてはいかがでしょうか!

半田赤レンガ建物へおとなの社会見学に行く


半田赤レンガ建物
営業時間:10:00〜17:00

定休日:年末年始

URL:半田赤レンガ建物 公式サイト

住所:愛知県半田市榎下町8番地


画像引用元:http://handa-akarenga.jp/index.html

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