名古屋の高級料亭で、日本の古典芸能に夢中になる「河文 Cultural Night-Visit Nagoya」

名古屋の高級料亭で、日本の古典芸能に夢中になる「河文 Cultural Night-Visit Nagoya」

 

「伝統的な日本文化」「古典芸能」と聞けば、よくわからず顔をしかめ、古いものには興味がないと知らんぷり……なんてこと、していませんか?

この記事を書いている私は、20代の女子大生。日本の伝統文化に関心はあるけれど、新しもの好きな若者らしく、古いものにはそっけない態度を取っていました……。

しかしそんな私が、「古典芸能って、こんなに面白いエンタメなの!?」と、ワクワクせずにはいられなくなった一夜があります。

この夏、名古屋市中区にある日本料亭「河文」で、平日毎日開催されている「河文 Cultural Night-Visit Nagoya」。江戸時代から続く料亭で着物を纏い、お酒を嗜み、芸者と遊ぶ……普段あなたが知らない名古屋にドキドキしながら、芸どころの文化を楽しんでみませんか?

由緒正しい高級日本料亭「河文」が生み出す、新たな『夜の名古屋観光』とは

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400年の伝統と文化を受け継ぎながら、挑戦と変革を続ける老舗日本料理店

名古屋駅から市営地下鉄桜通線で訪れられる“名古屋市中区丸の内”。ここは名古屋随一のビジネス街。県外の人にもよく知られた企業オフィスが立ち並び、スーツを着たビジネスマンが大勢行き交っています。

そんな丸の内は江戸時代、名古屋城下の町人地でした。碁盤割りの町に、職人や商人が営むたくさんの商家が、所狭しと軒を並べていたといいます。

町の一つに「魚の棚通り」と呼ばれる、魚屋が集まった通りがありました。数々の魚屋のなかで特に目利きが素晴らしいと評判だったのが「河内屋」。現在の日本料亭「河文」の前身です。

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河内屋は初代・河内屋文左衛門の魚屋から、仕出し屋、そして料理屋「河文」へと転身し、江戸中期には「魚の棚四軒」と呼ばれる優れた料理屋の一つに数えられるようになります。芸者が料亭で酒宴に上がるようになると、名古屋随一の芸者のあがる店として、後に「芸の河文」とも知られるようになりました。

建物の美しさも素晴らしく、明治以降は中日本の迎賓館として、伊藤博文、吉田茂、田中角栄といった歴代首相や、ミッテラン元仏大統領など、国内外の要人・著名人たちに愛されてきたといいます。

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有形文化財に指定された建物を保有する河文の歴史は、今年で約400年。江戸から続く市内で唯一の料亭であり、名古屋で最も長い歴史と伝統を持つ格式高い老舗です。

婚姻の両家顔合わせや催事場として選ばれたり、常に高級車が止まっているなど、河文を知る名古屋の人にとっては“敷居の高い場所”といったイメージがあるのではないでしょうか。

そんな河文ですが、近年、一般の方が気兼ねなく訪れられるようリニューアルをされました。日本料亭という枠にとらわれず新しい集いの場として、婚礼(ブライダル)や宴会・展示会、レストランやカフェなど、時代背景に合わせ様々な取り組みを行っています。

伝統とおもてなしの心を大切に、常に挑戦と変革を続ける。それが「河文」の魅力です。

歴史ある料亭で、日替わり5種の”学びある娯楽”を楽しむ「河文 Cultural Night-Visit Nagoya」

名古屋の高級料亭で、日本の古典芸能に夢中になる「河文 Cultural Night-Visit Nagoya」 - b92f92f3f830bd1d5a491003ca6252cf河文は2018年10月から、名古屋が誇る歴史と文化を継承し発信したいという想いで新たな企画を始めました。

それが、「河文 Cultural Night-Visit Nagoya」。

平日の月曜~金曜日、21時30分~23時という夜に行われている特別なイベントです。名古屋の新しい観光スポットとして今後展開していく計画もあり、注目を集めています。

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「芸どころ」と言われる名古屋で、日本文化・古典芸能を、地元はもちろん国内外の旅行客に楽しんでもらえるように、という趣旨でこの企画は始まりました。

日本舞踊、古典楽器、剣舞、和妻、御経など5種類の芸能鑑賞、お座敷遊びや着物の着付けなどの体験といった”学びある娯楽”を、日替わりで楽しむことが出来るのが特徴です。日替わりプログラムの内容確認は、こちらから。申込をすれば誰もが参加可能です(開催は申込人数によります)。

今回、IDENTITY名古屋のライターも「河文 Cultural Night-Visit Nagoya」(通称:名古屋カルチャナイト)に参加してきました!

花柳界(かりゅうかい)と呼ばれる、美しく華やかな古典芸能の世界をさっそく覗いてみましょう。

日本の伝統文化、「着物」について学び楽しむ

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どのようにプログラムは進んでいくの?

名古屋カルチャナイトでは、登録有形文化財に指定された河文の母屋を舞台に、その日に応じたプログラムで、芸の鑑賞や体験をすることが出来ます。

今回は「着付舞の鑑賞と着物の説明、着付け体験」の参加です。私が参加したプログラムはこのように進んでいきました。

21:30~ 受付
22:00~ 着付舞の鑑賞
22:20~23:00 お座敷遊び、写真撮影、交流

普段触れない古風な美にドキドキ…

プログラムの開始はすべて22時から。普段の観光といえば明るいうちで、こんな時間に出歩くなんてほとんどありません。それだけで非日常のドキドキ感は十分……!

取材日はあいにくの雨でしたが、屋内に入ると10人以上の参加者が思い思いに店内で談笑し、プログラムの始まりを待っていました。スーツを着た男性や身綺麗なマダムなど、年齢層は少し高め。もちろん若い方もおり、外国人女性のグループも参加していました。

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伝統的な数寄屋造りの店内は和洋折衷のハイカラな調度品が揃い、非常にムードが漂っています。私たちが普段慣れてしまった洋間とは異なる”古き良き日本の美”を、随所に見つけることが出来ます。

自分で選んで、プロにおまかせ!着付け体験

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着付けを希望する場合、別途¥3,000のオプション料金で、21:00来店・受付後に体験をすることができます。通された部屋で着物(訪問着)や帯を選び、着付けのプロに着替えさせてもらいます。

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着物をきちんと着るのは成人式ぶり。しっかり帯を締められて、まず改めて驚くことが……「姿勢が良くなった」!

着物は帯で締めることで腰や骨盤、丹田が安定し、肩周りが自由になる上に猫背になる要素が無くなる、というメリットがあります。着物を着るだけで自然に姿勢が良くなるのです。

さらに、着物は通気性に優れています。今回は蒸し暑い雨の夜の参加でしたが、洋服を着ていた時よりも着物を着ていると気温が涼しく感じられました。着物という衣服が、日本の素晴らしい発明であり文化であることを体感する瞬間です。

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なにもせずに突っ立っているだけで大丈夫。着付けのプロたちが手際よく仕立ててくれます。気さくに話しかけてくれるので、着付けられている間がとても楽しいです。

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私の着付け担当をしてくださった方が、「雨なのに来てくれて、ちょっと今日は張り切っちゃうわね」とニコニコしながら、素敵な帯を作ってくださいました……とっても可愛い!!

着付け体験が出来るテーマパークや着付け教室に習いに行かずとも、市内で着物をプロの手で体験させてもらえるのは嬉しいものです。海外の方も体験に参加しており、とても喜んでいました。

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着付け体験のポイントは、自分で好きな着物、帯、帯締めの色を選んで遊べること。昔の人もきっと細かな色合わせでお洒落を楽しんでいたんだなあ、と身近に想像できます。

若女将の解説が面白い!着付舞の鑑賞

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着付け体験のあとは「着付舞」の鑑賞です。

着付舞とは、音楽に合わせて素早く美しく着物を着付けながら行う舞踊のこと。現代の人になじみのある曲を和風にアレンジしたBGMで、着物を羽織った芸者さんが目の前で優雅に舞い踊りながら帯を締め、着付けを完成させていきます。「着る」という行為を「舞う」に変換させた、とても興味深い芸です。

今回は雨天のため完全屋内でしたが、晴天の時は中庭の外舞台で舞が披露されます。

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一人で舞って自分自身で着付けたり、二人がかりで舞い、凝った帯を作ったり。流れるような動きにすっかり目が吸い寄せられてしまいます。

一通り舞が終わると、若女将による着付舞の説明があります。この若女将のお話がテンポよく、本当に面白い!難しそうに思えていた古典芸能の世界がとても分かりやすく、するすると頭に入ってきます。「着物姿で可愛く見えるポージングとは?」といった豆知識もあり、古典芸能が親しみやすいイメージに変わること間違いなしです。この夏の浴衣シーズンに役立ちます……!

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着物と帯、といえば、時代劇やお笑いで“あるある芸”の「あ~れ~!」と帯をくるくる引っ張るシーン。これは帯回しという呼び名が正式にあると、教えてもらいました。ただ見るだけではなく解説の合いの手が入ることで、終始舞と着物について楽しく学ぶことが出来ました。

今回は着付舞のみでしたが、今後のプログラムには「白塗りの日本舞踊の化粧(鬘の着用も)と着付」も加わります。皆さんが良くイメージする京都の舞妓さんのような白化粧が、どのように行われていくのかを間近で見ることが出来ますよ!

着物の構造を「野球拳」で知る

優雅な舞を鑑賞した後は、参加者一人ひとりに小判が配られます。

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この小判はイベント内で行われるちょっとしたゲームの参加券として用意されています。ゲームは芸者さんと参加者が交流し、日本古来の「お座敷遊び」を楽しむことが出来ます。今回は「野球拳」を行いました。

野球拳は1924年に愛媛県で発祥した郷土芸能。祭囃子のような歌と踊りの後、「アウト、セーフ、よよいのよい」で互いにじゃんけんをする遊びです。1970年代のコント番組をきっかけに、じゃんけんで負けたら服を1枚ずつ脱いでいく、というお座敷芸として全国に広まりました。

名古屋カルチャナイトの野球拳は、1名の芸者さんvs参加者全員。一人ずつ小判を賭けながら、参加者が勝てば小判をお土産で持ち帰ることができ、芸者さんは服を1枚脱ぐ。負ければ小判は没収され、お土産はなし……というルールでじゃんけん勝負を行います。着物を着た芸者さんとの野球拳を通じて、着物がどれだけのパーツで出来ているか、構造を知ることが狙いです。

おしゃれをした女性も、スーツ姿のビジネスマンも、外国の方も、楽しそうに囃子を口ずさみ、じゃんけんをして一喜一憂。結果は、16人ほどいた参加者でもまったく芸者さんの着物を脱がすことが出来ませんでした……。どれだけ着物はパーツが多いかは、実際の着付けや野球拳に参加をして、確かめてみてください。

おもてなしや心遣いにあふれる、新しい名古屋の夜

 おいしいお酒とおつまみも

プログラムの合間には、河文特製の日本酒と、ちょっとしたおつまみをいただけます。アルコールがダメな人用に、お茶なども用意されています。

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日本酒らしい華やかで切れのある味わいが舌の上に広がり、芳醇な香りが喉から鼻に抜けていきます。飲みやすいタイプで食事とも合わせたくなるお酒でした。
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芸者さんとの写真撮影や交流会

プログラムの終了後には、今回、古典芸能を演じてくれた芸者さんや着付けの先生との写真撮影がありました。また、若女将とお話しする機会もいただけるので、より詳しく日本の芸や河文について知ることが出来ます。

写真撮影では、着付舞の時に教えてもらった立ちポーズを実践するとき……!

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……意識したつもりですが、やはり着物に着慣れている方と並ぶとまだまだ。着物が似合う立ち姿は、一朝一夕には行かないものです……笑。

プログラム参加中から終了後まで、ちょっとした会釈や声掛けなど、河文で働く人々の細やかな優しさを随所に感じました。敷居の高い高級料亭でありながら、一見さんにも居心地の良さを感じさせる心遣い。河文の「おもてなし」の素晴らしさに感動しながら、若女将に見送られ、名古屋の夜を満喫しました。

 若い人こそ一度は経験してほしい、日本の伝統や「古典芸能」という文化

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なんとなく難しそう……という気持ちから一歩踏み出すと、世界は広がる

古き良き時代の楽しみを、現代人に合わせた視点で楽しませてくれる名古屋カルチャナイト。参加する前は古典芸能の鑑賞に対して、見ているだけなんて退屈になるのでは?という思いがありました。しかし伝統的な高級料亭という、普段であれば到底接することのない空間にドキドキ。今までにない新たな視点で名古屋の観光に触れ、とても刺激的でした。

体験型形式や面白い解説といった工夫で、「こんなに古典芸能はエンタメ性が高かったのか!」という気づきや、着物のように「知っているようで実は知ろうとする機会が少ない日本文化」に親しむことができ、非常に充実した夜を過ごせます。海外の人も満足げに楽しまれており、河文さんの心を尽くしたおもてなしのおかげだと感じました。

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着付け体験で着物を纏うと、凛とした気分になれます。背筋を伸ばして座っていると、隣にいた初老のご婦人に、「素敵な着物を召されているわね」と微笑まれました。

普段接することのない日本の文化を愛おしく思い、着物が似合うよう年を取っていきたいという気持ちが、私の中から自然と生まれました。若いときこそ、普段は倦厭してしまう物事や伝統的な体験に触れることで、人生は豊かになるように思います。

 

名古屋観光にマンネリを感じている人、夜まで遊んでみたい人、海外の知り合いがいる人、特別な経験がしたい人……。古典芸能や日本文化に興味関心があるなしに関わらず、「河文 Cultural Night-Visit Nagoya」、名古屋カルチャナイトに、一度参加してみてはいかがでしょうか。

こちらの企画は8月31日まで。夏の夜は若い人こそ、古典芸能の世界に足を踏み入れてみることをおすすめします。忙しない現代人に必要なのは、風情のある娯楽、なのかもしれません。

 


「河文 Cultural Night-Visit Nagoya」
営業時間:受付21:30~23:00(着付け体験者は21:00に来店)

定休日:土曜・日曜

URL:河文 Cultural Night-Visit Nagoya 特設ページ

料亭「河文」公式サイト

住所:愛知県名古屋市丸の内2丁目12-19


画像引用元:https://www.thekawabunnagoya.com/kawabun/

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