気持ちよく晴れた日曜日、曇り模様の心で足下ばかりを見ながら歩いていた。
新しい職場での気疲れか、せっかくの日曜日なのに起きても気持ちがどんより。こんなときはお気に入りのパン屋さんに行こう、と決めた。
だっておいしいパンは、気持ちを切り替える魔法なのだ。
地下鉄の東山公園駅から5分ほど歩いたら、白壁とウッドパネルの対比が際立つおしゃれなお店が見えてきた。
ここが、「boulangerie L’Equipe de Koganei」(ブーランジェリー レキップ ド コガネイ)だ。
扉のかたわらには、おすすめの商品が書かれたボード。その下には、かわいらしい鉢植えが飾ってある。
ガラス張りのドアを開けたら、店内にあふれているのは焼きたてのパンの香り。思わず深呼吸したら、パンのやさしい香りが私の心にあたたかく満ちていった。
「いらっしゃいませ」。カウンター越しに、シェフの奥さまがやわらかな笑顔で迎えてくれた。
ガラス張りの工房では、シェフがキビキビと作業をしている。数々の有名店でパンを作り続けてきたシェフの動きが織りなすリズミカルな作業風景が好きで、じつはここを訪れる理由のひとつとなっているくらい。
今日のお目当ては、「黒糖ブルーベリー」(税抜280円)。入口の看板にも書いてあった、人気の一品らしい。紅茶で煮たブルーベリーとクランベリーが入っていて、もっちりした食感なのだとか。
早く食べたい気持ちを押さえながら、他のパンもゆっくり見てみよう。
早めに来たからさまざまな種類のパンがあって、思わず顔がほころぶ。
「たくさんあるので、ゆっくり選んでくださいね」。
どれを購入するか迷っていたら、奥さまが優しく話しかけてくれた。種類が一番揃っているのは、10時半頃なんだとか。
パンについてあれこれ質問し、丁寧に答えてもらえる。そんな会話に癒される。
ここへ足を運ぶと必ず購入するのは、店と同じ名前のバケット「レキップドコガネイ」(税抜200円)。一回で食べきれるように30cmほどの小ぶりなサイズで、重宝している。
噛めば噛むほど小麦の味が感じられて、味わい深い。皮がパリパリで食感も楽しめるので、お気に入りのパンの一つだ。
レモン色が鮮やかな「脇坂さん家のレモンパン」(税抜220円)も買ってみる。愛媛県中島産のレモンを使ったクリームが、シェフのこだわりだ。
酸味が効いたクリームと、2層仕立てになったマスカルポーネクリームとの相性がバツグンで、さっぱりと食べられるのだそう。
まだまだ気になるパンはあったけど、次回お店に来るときの楽しみにとっておこうと決めた。
お会計を待つ間に、ずっと気になっていた店名の由来をシェフに聞いてみた。
店名の「boulangerie L’Equipe de Koganei」の「レキップ」は、フランス語で「仲間、チーム」の意味。
シェフが独立してお店を出すときに、お店を設計してくれた設計士さんや工務店、材料を作ってくれる生産者さん、家族も含めて関わった人みんながチームなんだ、との思いでつけた名前だそう。
ふしぎなくらい、シェフの言葉が心にストンと落ちた。
お店を出る頃には、曇っていた心もすっかり晴れ模様になった。シェフの言葉を思い出しながら、帰り道を歩き出す。
そっか、新しい職場のみんなも、チームなんだ。一人でなんとかしようとして、気張りすぎていたかも。そういえばあの先輩も、パン好きだと言ってたっけ。
明日は月曜日。職場に行ったら、パンを一つおすそわけしてみよう。そう思うと、仕事に行くのが楽しみになってきた。
うん、大丈夫。まっさらな気持ちで、また歩き出してみよう。
※メニュー・営業時間などは公開時点での情報となります。最新の情報は各店舗のHPやSNSにてご確認ください。
boulangerie L’Equipe de Koganei(ブーランジェリー レキップ ド コガネイ)
営業時間:9:00~17:00
定休日:月曜日(祝日の月曜日は営業、翌日の火曜日お休み)
※ 公式サイトの営業日カレンダーをご確認ください。
URL:公式サイト 公式Instagram