名古屋市博物館で開催中(4月7日まで)の特別展「挑む浮世絵 国芳から芳年へ」では、博物館所蔵のコレクションの中から選りすぐりの150点を展示替え無しで一挙公開。アート初心者でも気軽に楽しめる工夫いっぱいの展示内容をご紹介します。
目次
”奇想の絵師”歌川国芳ってどんな人?
底知れぬ好奇心を持ったアイディアマンかつ表現の探求家
歌川国芳(1797-1861)は江戸で活躍した浮世絵師。12歳で歌川豊国に入門し、6年後に役者絵などでデビューするもののしばらく売れない年月を過ごします。
国芳作品がヒットしたのはデビューから10数年後の31歳の時。「武者絵の国芳」として世に評価されたのち、旺盛な好奇心と柔軟な発想、豊かな表現力を武器に、武者絵や戯画に新機軸を打ち出し、浮世絵を活性化させていきました。
本展では、国芳はもちろん、その弟子たちにもスポットを当て、国芳とその弟子たち含む「芳ファミリー」が、時代や人々の嗜好・要請に合わせてどのように画題や作風を変化させていったのか、その挑戦の軌跡をたどっています。
また、今回展示されている全150作品は全て、国文学者の尾崎久弥と、医学者の高木繁のコレクションで構成されており、その全てが名古屋市博物館所蔵の作品であることも注目すべきポイント。
国芳は今でこそ人気ですが、最初から評価されていたわけではなく、大正時代から先の二人がコツコツと収集し、まだ評価が低かった国芳らの魅力を普及するよう力を尽くしたことで徐々に人気を獲得していきました。
全5章の展示構成で”UKIYOE”の魅力を余すところなく堪能
武者絵から血みどろ絵、美人画まで「芳」ファミリーの活躍を一度に見られる貴重な機会
本展は5つの章で構成されており、そのどれもが見応えたっぷりの内容になっています。
まず第1章は「ヒーローに挑む」。国芳の出世作でありその後も得意とした歴史上や物語に登場するヒーローたちの勇ましい姿を描いた武者絵が展示されています。
縦横に大判3枚をつなげて作る”ワイド画面”を活用するなどして生み出される、画面からあふれんばかりの迫力やわくわくする躍動感が楽しめます。
第2章は「怪奇に挑む」。ヒーローの勇ましさを強調するためには、彼らが対峙する怪奇をいかに恐ろしく表すかということが重要。そしてその状況は、異常であればあるほど画中のドラマ性を高めてくれます。
国芳や弟子たちは、自分たち個人の嗜好ではなく、幕末から明治にかけての時代の要請に応え、血がほとばしる残虐な場面を描きました。一番の見所は、落合芳幾と月岡芳年が手がけた「英名二十八衆句」の全点一挙公開です。
第3章は「人物に挑む」。浮世絵の歴史の中心には常に美人画、役者絵、つまり人物画がありました。
国芳が描く美人画は現実味にあふれ、明るさに満ちており、その時流行った美人像もしっかりと捉えています。一方で芳年が描く美人画はドキッとするほど妖艶な雰囲気をたたえており、まるで自分がその女性の隣に居るかのような感覚にさせられます。学芸員さん曰く、単なる理想像の女性ではなく、”しぐさ”や”気持ち”をまとった表現がされているのが、国芳一門の美人画の魅力のひとつです。
第4章は「話題に挑む」。この章では、当時話題となった見世物を取材したものや、世相をネタにした戯画(滑稽な絵)など、ニュースソースとしての浮世絵が紹介されています。
国芳の戯画は、バリエーションが豊富なだけでなく、アイディアの奇抜さにおいて他の追随を許さないと評価されており、浮世絵界に新しい風を送り込んだと言っても過言ではありません。一見ユーモアに見える中に風刺があるなど、まさにこの章のキャッチコピーである「面白いには裏がある」作品たちを楽しむことができます。雀や猫をモチーフにした作品も多く、(もちろんそれらにも裏があるのですが)単純に見ているだけでも癒されますよ。
そして最終章は「芳」ファミリー。親分肌だったと言われる国芳にはたくさんの弟子がおり、その多くが画号に「芳」の字をつけています。
この章では、”最後の浮世絵師”と呼ばれた芳年をはじめとして、国芳作品のDNAを持つ絵師たちの作品をまとめて紹介しており、それぞれの絵師たちが国芳が切り開いた浮世絵をどのように発展させていったのかを見ることができます。
さらに、全体を通してところどころに現れるおもしろい仕掛けもこの展示の魅力。覗き穴があったり、真下から見た時しか浮かび上がらない要素を隠し持つ作品があったりと、実際に博物館に足を運ぶからこそ楽しめる内容となっています。
浮世絵グッズをお土産に!さらに、全ての作品が写真撮影OK!
浮世絵関連のお土産が充実のミュージアムショプにも立ち寄りたい
アート鑑賞に出かけた際のもうひとつの楽しみと言えばグッズ収集。名古屋市博物館のミュージアムショップでも、浮世絵関連のグッズや書籍を取り扱っています。この特別展で興味を持った人は、ぜひ帰りにチェックしてみてください。
また、本展の特色として、会場全体が写真撮影OKとされていることも魅力です。記録写真が撮影できると、帰ってきたあとも楽しむことができるのが嬉しいですね。
いかがでしたか。これだけのコレクションを一度に見られる場は滅多にない機会。今まで浮世絵に馴染みがなかった人も、ぜひ次のお休みに出かけてみてはいかがでしょうか。
名古屋市博物館「挑む浮世絵 国芳から芳年へ」
会館時間:9:30〜17:00(入場は16:30まで)
開催日:2019年2月23日(土)〜4月7日(日)
定休日:毎週月曜日、第4火曜日(会期中の休館日はHPにてご確認ください)
入場料:一般 1,300円、高大生900円、小中生500円(20名以上の団体料金はHPにてご確認ください)
URL:
住所:〒467-0806 愛知県名古屋市瑞穂区瑞穂通1-27-1