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特別な一皿が、日常に豊かさをプラスする。本山のカフェ『作家story 作家の器のある暮らし』

特別な一皿が、日常に豊かさをプラスする。本山のカフェ『作家story 作家の器のある暮らし』

グルメ 

「奥路地に佇む洋食店、老夫婦が営む小さなパン屋、休日だけ開店する雑貨屋——その土地に根付き、日々の暮らしにそっと灯りをともしてくれるようなお店が、名古屋にもたくさんあります。『あの娘とナゴヤ。』では、名古屋で暮らす女性が、何でもない日に出会う、とびっきり魅力的な場所を「ストーリー」とともにご紹介。あなたの毎日に添える“ステキ”を、名古屋の街へ見つけに行きませんか?」

『作家story 作家の器のある暮らし』との出会い

新生活が始まってから、もう季節が一つ過ぎた。

穏やかな春も終わり、降り注ぐ日差しも日々その強さを増す。友だちの服も、心なしか鮮やかな色が増えてきたように思える。そろそろ夏服を新調しなきゃなあ、なんて思いながら、手前にあったその場しのぎの白いブラウスを引っつかむ。

この春から、名古屋支店に異動となり、プロジェクトリーダーを任されることになった。新しい環境での、初めての責任あるポスト、周りからの期待に応えるためにも、以前にも増して精力的に仕事に取り組んだ。慣れないことの連続だけど、充実感あふれる日々を送ることができている。

しかし、すべてがうまく進んでいる、というわけでもない。最近は自分のための時間の確保、これがまったくと言っていいほどできていないのだ。家に帰って、資料を見ながらご飯を口の中に詰め込み、洗濯をしてシャワーを浴びて寝る。そんな味気のない生活が続いていた。

たまには息抜きしよう、そう思い立った私は、ゆっくりと落ち着ける場所を探しに出かけた。

いつもは名古屋駅や栄駅を選ぶけど、今日はなんとなく雑踏は避けたい気分。静けさと目新しさとを求めて、本山で降りてみることにした。

本山駅6番出口を後にして、住宅街に足を踏み入れる。

特別な一皿が、日常に豊かさをプラスする。本山のカフェ『作家story 作家の器のある暮らし』 - IMG E6745 1

しばらく歩くと、窓際に個性的な器が並んでいるお店に出会った。表の立て看板は、キッシュのメニューのようだ。入り口には『作家story 作家の器のある暮らし』と書かれている。器たちが醸し出す独特の空気感に引き込まれるかのように、ドアを開く。

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『作家story』にこめられた思いに触れる

お店に入るとすぐに、色とりどりの食器が目に飛び込んできた。自分の背丈よりも高い棚に、所狭しと並べられている器の数々。壁に掛けられたモダンなアート作品。至るところに置かれた一輪挿し。そのどれもが目に新しく映った。

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鼻孔をくすぐるバターの香りを楽しみつつ、窓際に近い席につく。レモン水を運んできてくれた代表の中野さんに「趣のあるお店ですね」と言うと、お店を始めたきっかけを話してくれた。

「作家さんの器をはじめて買う、そんなお店になりたかったんです」

ギャラリーのようにハードルが高い場所にはしたくない、作家の器をもっと身近に感じて欲しい。 だからこの店では、料理を注文すると好きな器を選ぶことができる。作家さんの器を実際に手に取り、使ってみて、器の良さを実感してもらえる。『作家story』でこの機会を提供したかった、と語った。

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「作家の器は、その上に乗せられたものの魅力を最大限に引き出すんです。例えば、ただの白いお皿でも、軽さだったり、その醸し出す雰囲気だったり、抜群の存在感があります。だからこそ、何をのせても、それが魅力的に見えるようになるんですよね」

繰り返される日々に色を添える、そんな一枚と出会えるような場にしたかった。と思いを語る彼女の瞳は輝いていた。

『作家story』は“作家”と“家”を繋ぎ、この二者間のストーリーを提供する。お客様にもっと作家の器を知ってもらい、またお客様の声を作家に届ける、架け橋のような存在となっている。お店のロゴが、このコンセプトを表している。

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「人もお皿も一期一会です。大切な時間を過ごすために、このお店を選んでよかった、そう思ってもらえると嬉しいですね」

偶然ではあったけれど、このお店に出会えてよかった。中野さんの話を聴いてそう思えた。

人生を彩る一皿との出会い

せっかくだし、お皿が主役になるようなご飯が食べたい。そんな思いから、ワンプレートでいろいろな味が楽しめる「サラダ付きキッシュプレート」(税込 1,450円)を頼むことにした。

看板メニューのキッシュをはじめ、素材はすべて無添加のものを使用し、砂糖は完全不使用。お店にも置いていないそうだ。だから、提供している料理はすべて素材の味を活かしたものとなっている。

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9種類のキッシュから2つを選ばなければ。焼きナスやトマトにカレー、どれもが魅力的に思えて、なかなか決められない。

お店の一番人気を聞くと、「しらすとレモンのキッシュ」とのこと。じゃあ、ひとつはそれにしよう。もう一つは「チョコバナナキッシュ」にしようかな。砂糖不使用のフレーズも気になるし。

サラダのドレッシングも選べるようだ。にんじん、たまねぎ、納豆の3種があるが、今回はたまねぎにすることにした。

カウンターの前まで行き、使いたい器を選ぶ。海のように深い青の平皿、タイルのようなスクエアプレート、春の一日を切り取ったような華々しい深皿……。個性あふれる器が瞳に映る。

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「これでお願いします」

私は白いプレートを選んだ。オーナーの話にあった、白い器の秘めたる魅力に心惹かれた。私の味気ない日常に彩りを添えていくための、キャンバスとなってくれる白。この白いお皿が私の新たなスタートになることを願いつつ。

「お待たせいたしました。ごゆっくりどうぞ」

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キッシュプレートが運ばれてきた。プレートいっぱいに色とりどりの料理が盛り付けられている。きつね色のキッシュが、白いお皿によく映えている。

手を合わせてからフォークを手にした。しらすとレモンのキッシュの先端にスッとフォークを入れ、口に運ぶ。

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あ、おいしい。

やさしいたまごの風味がふんわりと口に広がる。サクサクとしたキッシュ生地をひと噛みすると、芳醇なバターの香りが鼻に抜ける。レモンの爽やかな酸味と苦みがアクセントにもなっている。くせになる味わいで、キッシュを口に運ぶ手が止まらなかった。

チョコバナナキッシュも口にしてみた。バナナの自然な甘みがチョコレートの上品な苦みと複雑に絡み合っている。甘みを加えるために、甘酒を使用しているらしい。本当に砂糖不使用なのか疑うほどに、何の違和感も感じなかった。素材のポテンシャルを活かした味付けに感動し、やわらかな空気が私を包み込むような感じがした。

幸せって、当たり前のように過ごしていた日々の中に潜んでいたんだな。素敵な器で、おいしい料理をいただく。こういう時間をもっと大切にしていきたい。

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『作家story』との出会いが、私にちょっとした日常の大切さを教えてくれた。今度のお休みには、作家の器を買いに行こう。じっくり時間をかけて選ぼうと思う。何気ない日々に幸せをプラスしてくれる、特別な一枚を。

外に出て、差し込む初夏の太陽に目を細める。なんだか新たな一歩を踏み出したような、晴れやかな気分だ。生きることに疲れたら、またここに戻って来ればいい。すさんだ心に豊かさを与えてくれる『作家story』に。

 

※メニュー・営業時間などは公開時点での情報となります。最新の情報は各店舗のHPやSNSにてご確認ください。

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